思いが伝わる、手書きの遺言書
最近は、手紙を手書きする機会がめっきり減った、という方も少なくないのではないでしょうか。
いまの世の主流は、スマートフォンによるメッセージのやり取りですから。
でも、文具屋さんに行って、季節折々の絵柄の便箋などを見ると、心が和みます。久しぶりに手紙を書いてみたいなと思います。
遺言書も似たような心持ちで書けるのかもしれないなと思いました。(自筆証書遺言のことです)
自筆証書遺言は、本文を手書きすることが求められていますが、残される方へのお手紙と思えば、心理的なハードルが下がるような気がしませんか。
仮に、遺言書がない場合、民法で定められた相続人全員が集まって、財産をどう分けるかを話し合う、遺産分割協議を行います。
スムーズに協議が終わることもあれば、もめることもあります。もめて協議がまとまらない場合は、家庭裁判所に「調停」や「審判」を申し立てることになります。
このようなトラブルは、財産の多い家庭の話と思われがちですが、そういうわけでもありません。
裁判所の調査結果によると、令和3年中に全家庭裁判所で扱った遺産分割事件の約33%が相続財産1,000万円以下、約44%が相続財産5,000万円以下の事案です。合計すると、相続財産が5,000万円以下の案件が全体の80%近くを占めています。遺産によるトラブルは、ドラマのような富裕層だけの問題ではなく、一般家庭でも生じていることが分かります。
これは、調停や審判にまで至った数です。遺産分割協議はまとまったけれども、相続人の間で感情的なしこりが残った、という数は含まれていません。
ご自身の思いを伝えたり、意思を相続に反映できるのが、遺言書の一番のメリットです。遺言書がないと、残された方の間でもめ事になる可能性もあると思って、お元気なうちに書いてみてはいかがでしょうか。
自筆証書遺言は数か月とか数年をかけて、じっくり考えることができます。自筆証書遺言は、法務局の保管制度もありますから、作成者の生前の意思が守られるので安心です。
考えがまとまった後、遺言書を書く際のルールについては、自治体や司法書士などの無料相談などを利用すれば助けになります。
法務局による保管制度については、政府広報のこちらのページの解説が親切です。