HISの減資、欠損金フル活用

ニュースでご存じの方も多いと思いますが、旅行会社でおなじみのエイチ・アイ・エス(HIS)は、現在の資本金は247億9,800万円を 約247億円減らして、1億円に減資することを、10月27日に開く臨時株主総会で決議することを予定しています。

これは、資本金が1億円になることで税制上「中小企業」となり、税の優遇措置が受けられるようにすることが目的と言われています。

よく知られているのは、外形標準課税です。これは、資本金が1億円超ならば、赤字であっても法人事業税が課されるというものです。例えば、資本金が100億円の企業の場合には、約5000万円の税負担となりますが、資本金が1億円以下であれば課されません。

しかし、HISの減資の目的は、外形標準課税の回避よりも、さらに大きな狙いとして、保有していたハウステンボス株の売却により得られる利益を最大限に活用することが挙げられています。

HISは業績悪化のため21年10月期まで2期連続で750億円の最終赤字を計上し、単体でも約280億円の繰越欠損金を抱えています。

資本金1億円超の場合、繰越欠損金をすべて利益と相殺できるわけではないのですが、資本金1億円以下の企業の場合は、利益をすべて繰越欠損金と相殺できるようになるのです。

HISは、資本金を1億円とすることにより、ハウステンボス株の売却益を、繰越欠損金と相殺して最大限に活用するのものと思われます。

このように資本金を1億円以下にしておくと、欠損金をフル活用することができるので、税負担を軽減することが可能となります。
外形標準課税の回避よりもむしろこちらのほうが節税の効果は高いと言えます。