親が認知症、後見人の心得は

首都圏近郊にお住いのAさん(50代)は最近、同居する母親(80代)の成年後見人になることを考えています。

認知症が進んでいた母親の銀行口座から介護費用を引き出そうとしたら、窓口で「後見人が取引してください」と言われてしまったのがきっかけとのこと。

成年後見制度は、判断能力が低下した人の財産管理などを担います。

高齢化に伴う認知症患者の増加を背景に、制度利用者は24万人を超え、ますます増え続けています。

後見人には、司法書士や弁護士のような専門職が就任することも多いですが、親族が後見人に選ばれる割合も2021年で約20%と、5人に1人の割合でいらっしゃいます。

親族が後見人になるにはどうしたらよいのでしょうか。

まず、家庭裁判所に申立てをします。

申立書のほか、主治医による診断書、財産目録、収支予定表などをセットにして提出します。

申立て後は家庭裁判所で申立人らの面接などがあり、後見人を審判で選任します。

申立てから選任までにかかる期間は、およそ1~2か月とされています。

後見人の役割

後見人に求められる大きな役割は、本人の財産を適正に管理し、本人の利益を保護することです。

親の財産であっても自分の財産と分別して管理しなければなりません。

財産を不正に利用したりすれば刑事責任を問われる可能性もあります。

一方、本人の生活環境の維持や向上など、本人の利益になるものについては財産を活用します。

将来の相続財産が減るからという理由で、財産の出し惜しみをすることは禁物です。

このような前提で後見人は財産を管理します。

裁判所への報告

裁判所に対しては、後見人に就任した後、速やかに初回報告を行います。

初回報告では、財産目録や収支予定表、通帳のコピーなどもあわせて提出します。

初回報告の後は、原則として年1回、前年の財産や収支の状況を裁判所に定期報告します。

定期報告でも財産目録や収支予定表、通帳のコピーを提出しますが、後見人として大切なのは、普段から領収書を保管するなどの日々の支出を確実に記録しておくことです。

介護サービス利用料のような、使途が明らかなものは口座からの自動引落を利用して、通帳に記録を残すことがおすすめです。

また、本人の利益になるか判断に迷う、高額な支出については、事前に裁判所に相談できる仕組みがあります。

事前に裁判所に相談することで、トラブル防止に役立ちます。

後見人の仕事で悩んだら

後見人の仕事で悩んだら、成年後見センター「リーガル・サポート」、自治体の支援窓口でも相談に応じてもらえます。

成年後見は、原則として本人が死亡するまで続きます。

後見人が「もう面倒」と思っても途中で辞めることはできません。

本人の人生を見届ける重い責任があることを自覚して、後見業務を行っていかなければならないのですね。

親族として後見人になることが重荷だな思う場合は、成年後見を扱っている司法書士にもご相談いただけたらと思います。