認知症のお年寄りの方、知的障害のある方、精神障害のある方は、判断能力の面でハンディキャップを負っています。
そのため、通常の人と同等に契約をしたり、法的手段を行うことが困難です。
このような方々が、悪質業者による被害等に遭わず、安心して暮らしていけるよう、法律面からサポートするのが成年後見制度です。
どんな場面で成年後見が必要になる?
では、どのような場面で成年後見が必要になるのでしょうか。(ここでは、分かりやすくするため、法定後見の中の「後見」のケースとします。)
「後見人をつけたほうがいいかな」「でも、後見人をつけずに何とかならないかな」という典型的なケースとして、以下の4パターンが考えられます。
- 銀行預金を引き出したい
- 老人ホームの入所契約をしたい
- 不動産を売買したい
- 相続の手続きをしたい
❶ 銀行預金を引き出したい
ご本人が既に老人ホーム等で生活をされていて、諸費用はすべて口座振替という場合では、銀行預金が引き出せなくても特に困ることはありません。
しかし、ご本人が入院することになり、臨時の支払いが必要になる場合が往々にしてあります。
このような時、請求書を受け取ったご家族が、銀行へ行ってお金を引き出そうとしても、銀行員から
「ご本人でなければ引き出せません」「認知症なのでしたら成年後見人をつけてください」と言われ、途方に暮れるというパターンです。
このような場合、まず考えられる対応策は、
入院費は自分が立替えておき、相続の際に精算することです。
ご家族に立替するだけの資力がある場合は、これが最もシンプルではないでしょうか。
次に考えられるのは、金融機関に事情を説明して対応をお願いすることです。
以前はこれに応じる金融機関はほとんどなかったと思いますが、現在は状況に変化があるようです。
入院費など、ご本人のための出費であることが明らか、かつ金額も支払先も明確である場合には、対応してもらえることもあるようです。
しかし、現金として出金が可能か、病院等への送金に応じるのみか。一度限りか、毎月の支払も対応してもらえるのか。
このようなことは、金融機関に個別に確認せざるを得ません。
ご家族に立替するだけの余裕がなく、金融機関で個別の対応がしてもらえない、となると成年後見制度の利用を検討することになります。
❷老人ホームの入所契約をしたい
老人ホームに入所するのはご本人ですから、入所契約はご本人がするべきものです。
でも、施設によっては、ご家族との契約でも認めてくれるところもあるかもしれません。
そういうところが見つかれば、成年後見制度を利用せずに入所ができることになります。
しかし、「ご本人に契約能力がなければ後見人が法定代理人として契約をする」のが本来の形です。
後々問題になる可能性がある場合は、避けた方がよいかもしれません。
例えば、ご本人の子供が複数で、その兄弟間で意見の相違があるときなどです。
「もっと費用の安い施設に入れるべきだ」ということを考えるような兄弟がいると、「契約は本人の意思に基づいたものではないから無効」と言い出すリスクがあるので注意が必要です。
後々問題にならないように、司法書士としては、可能な限り、後見人との間で契約することをおすすめしたい気持ちです。
❸不動産を売買したい
ご本人が重度の認知症でしたら、もはや不動産の売買はできません。これはどうにもできません。
施設入所や介護費用にあてるため自宅を売却したい、バリアフリーのマンションを購入したい、という理由はごもっともと思います。
しかし、いくら「ご本人のため」であっても、ご本人が「売る」「買う」という意思表示ができなければ、当然ながら売買は成立しないのです。
ご本人のためにどうしても不動産の売買が必要であれば、後見制度を利用するしかないのです。
❹相続の手続きをしたい
相続が発生すると、どのように遺産を分けるかの話し合いをしなければなりません。これを「遺産分割協議」といいます。
遺産分割協議を行うには、その意味をしっかり理解できるだけの判断能力が必要です。
つまり、重度の認知症の方は遺産分割協議はできないのです。
その場合、成年後見人を選任して、その後見人がご本人の代わりに協議を行うことになります。
もし後見人をつけたくない、ということであれば、遺産分割の先延ばしすることが考えられます。
夫が亡くなり、相続人は妻と息子が一人、妻は重度の認知症である、という場合を考えてみましょう。
妻がかなりの高齢で、近い将来に二次相続が起きそうであるならば、夫の相続手続きはしないでおいて、妻の死後に、息子が両親の相続手続きをまとめて行う、という方法です。
もちろん二次相続はいつになるかわからないこともありますから、先延ばしができないのであれば、後見人をつけて遺産分割を進めるしかない、ということになります。
また、遺産を法定相続分で分ける場合は、そもそも遺産分割協議は不要です。
もし遺産に不動産があって、認知症のご本人が法定相続分を相続した場合は、認知症のご本人の関与がなくても不動産の名義変更が可能です。
不動産についてはこれで対応できますが、金融機関における預金の相続手続きについては、相続人全員の同意が必要になるので、認知症のご本人が対応できなければ、後見人を選任して対応することが必要になってきます。
後見人が必要になったら
ご家族としては、突然「後見人が必要」と言われても戸惑うことと思います。
できれば後見人を選任しないで、何とかしのぎたいというのが本音ではないでしょうか。
上記のような検討をしても、やはり後見人が必要らしい、ということになりましたら、後見業務を扱っている司法書士にご相談することをおすすめします。
後見人は、ご本人様が今どのような状態でいらっしゃるかに注目し、ご本人様のためにオーダーメイドで対応します。
そして、後見人は、ご本人様と信頼関係を構築すること、ご家族の方と協調すること、行政・福祉担当者とも連携することが求められます。
一方、後見人は、裁判所から監督を受け、裁判所及びリーガルサポートへの報告義務を負うことで、適正に業務を行うことが担保されています。
当事務所は、後見業務に注力しています。成年後見の仕組み、後見人の役割など丁寧にご説明させていただきます。
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