相続登記の効力について

相続登記の効力は、令和元年7月1日より変更となりました。

従前は、

相続による権利の承継については、遺産分割、遺言による指定、遺贈等がある中で、第三者との関係について、従前はこれを規定した条文はありませんでした。そのため、第三者との関係については、相続と登記に関する一連の判例法理によって規律されてきました。

まず、法定相続分による権利の取得については、登記をしなくとも権利の取得を第三者に対抗できるものとされていました(最判昭38.2.22)。遺言による相続分の指定についても、判例は、法定相続分と同様に登記は不要とし(最判平5.7.19、最判平4.6.10)、いわゆる「相続させる旨の遺言」についても、これを遺産分割方法の指定ととらえた上で、法定相続分や指定相続分による権利の承継と異なるところはなく、登記をしなくとも権利の取得を第三者に対抗し得るものとされていました(最判平14.6.10)。

しかし、これでは登記をするメリットが少なく、相続登記をしない人が多くなってしまいます。また、このような考え方のままでは、相続人はいつまでも登記がなくても第三者にその所有権を対抗できることになり、法定相続分による権利の承継があったものと信頼した第三者が不測の損害を被るなど、取引の安全を害するおそれががありますし、登記制度に対する信頼も損なわれることにつながります。
そこで民法899条の2 第1項が新設されました。

(新設)
民法899条の2 第1項 

相続による権利の承継は、遺産の分割によるものかどうかにかかわらず、次条及び第901条の規定により算定した相続分を超える部分については、登記、登録その他の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができない。

民法899条の2 第1項

この条文が新設されたことにより、従前は登記がなくても対抗し得るとされてきた相続分の指定や遺産分割方法の指定による不動産の取得についても、対抗要件を具備することが必要とされました。これは従来の判例法理を変更するものです。
なお、法定相続分に応じた権利の取得については、登記がなくとも第三者に対抗できますので、従来のルールから変更はありません。

民法899条の2 第1項の規定は、第三者との関係について規定するものなので、共同相続人間においては登記の有無は問題となりません。

例えば、被相続人A、相続人がB・Cの場合において、AがBに遺産の不動産すべてを相続させる旨の遺言を残していた場合、仮にCが法定相続分について相続登記をしたとしても、第三者が現れる前はCの登記は無権利の登記であり、Bは登記がなくても不動産全部の権利取得者として、Cに法定相続分による登記の更正を請求することができます。

しかし、Cが更正登記に応じない間に、Cの債権者がC持分を差し押さえた場合には、Bは第三者に対抗できないため、権利の一部を失うことになります。

対抗要件

民法899条の2 第1項の対象となる財産は、不動産だけではありません。預貯金などの債権や株式、動産などの権利の取得に対抗要件が必要とされるすべての財産が対象となります。なので備えるべき対抗要件は、不動産については登記、自動車については登録、その他動産については引渡し、債権については、債務者に対する通知又は債務者の承諾であり、債務者以外の第三者に対しては確定日付のある証書になります。

いつから

ここでご説明した改正は、令和元年7月1日施行のため、令和元年7月1日以降に開始した相続について既に適用されています。

法定相続分とは異なる割合で相続を行う場合は、売買のような不動産取引と同様に、令和元年7月1日以降の相続については、相続後の名義変更を速やかに行う必要があります。

なお、令和元年6月30までに開始した相続は、旧法が適用されます。

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